「いいよな~、斗馬は。
俺らなんか男子校で、むさ苦しい生活送ってんのに」
なぁ?と目配せし合う彼ら。
「今日だって先輩のパシリやらされたんだぜ。
あ、斗馬も知ってんだろ、俺らの中学の広川先輩。
あの人の仲間がこないだ、中学生とモメたらしくてさ。
やられっぱなしでムカつくからって、俺らが呼び出しに行かされたんだよ」
「へぇー、中学生相手にムキになってんだ、先輩たち」
斗馬くんがあきれたように言うと、彼らも「だよな」と嘲笑った。
「しかもさ、その中学生、すげぇ細くて弱そうなの。
顔とか女みてーにキレイなの。
あんなガキにやられたとか、先輩方もダセェよな~」
――ガタンッ! と床が鳴った。
大きく後ろに動いたイス。
「……藍?」
急に立ち上がったあたしを、斗馬くんが訝しげに見上げた。