斗馬くんの肩にコトンと頭をのせると、優しく髪をなでられた。
3回ほど手のひらが往復したところで、彼の携帯が鳴った。
「出ないの?」
たずねると、予想通りの答えが返ってくる。
「いいよ。メールだし」
斗馬くんはあたしといるとき、ほとんど携帯を見ない。
友達が多いからよく鳴るのに、「今は藍といるんだから、いい」と言って。
「……よくないよ。あたし、斗馬くんの友達に恨まれるじゃん」
困ったように言うと、彼も困ったように笑って、渋々携帯を開いた。
画面の文字を追っていた目が、ふと険しくなった。
「……どうしたの?」
「え? いや、別に」
斗馬くんは返事を送らずに、携帯をポケットに戻した。