あたしはなるべく室内の様子を気にしないようにしながら、足を踏み入れた。
部屋中にしみついたタバコの匂いが、あたしを拒絶しているように感じた。
窓に手を伸ばそうとしたとき
突然、カーテンが大きく舞い上がり、
強い風が部屋に吹きこんだ。
机の上に置いた本が、バサバサとめくれていく。
そして、その中にはさんでいた
一枚の紙らしきものが
木の葉のようにひらりと床に落ちた。
心臓が止まるかと思った。
止まっても不思議じゃなかった。
だってそれは、絶対に
ここにあるはずがないもので。
あたしは目まいを覚えながら
その“絵”を、凝視した。