地元の駅に着くころには、昼間なのに空が暗くなっていた。
風も強くなってきて、嵐を予感させる。
雨が降らないうちに帰ろう。
あたしは家路を急いだ。
数週間ぶりの自宅アパートは、変わらずそこにあった。
古ぼけた外観も
さびた鉄の階段も
せまい自転車置き場も
当たり前だけど、何も変わっていない。
そういえばあたしは、ずっとここで暮らしてきたんだ。
他人ごとのように思った。
このアパートで那智と暮らした自分。
海辺のホテルで斗馬くんと過ごした自分。
どちらも自分なのに、まるで別の人間が2人いるように感じて
頭がうまく整理できない。