――…早朝の海は、清らかな音を奏でている。
朝日と波音に起こされて、ゆっくりまぶたを開けると
最初に見たのは、後ろから抱きしめるように回された、斗馬くんの腕。
そっか、あたし、昨夜……。
すぐそばで聞こえる寝息に、胸の奥が甘酸っぱくなった。
斗馬くんが目覚める前に服を着ておきたくて、そっと体を起こす。
「……っ、起きてたの?」
急に彼の腕に力がこもり、あたしは焦った。
「今起きた……」
寝起きの声はいつもより低くて、ドキッとしてしまう。
耳の後ろから響く分、よけいに。
「藍。……こっち向いて?」
そんなの恥ずかしすぎて、絶対ムリだ。
背中を向けたまま小さく首を振ると
斗馬くんは優しいため息をついて、あたしの髪にキスをした。