――『俺、桃崎さんが好きだ』



あのときあたしは驚いたけど

ホントは、嬉しくもあったんだ。


でも嬉しいのを認めたら、那智と過ごした時間が消えてしまうような気がしていた。


そしてそれは、自分の存在が消えるのと同じことだった。



だけど、違うんだ。


あたしはちゃんと生きて

進んでいる。






「……好き……。あたし、斗馬くんが好きだよ」





泣きそうなほどに感情がこみ上げたけど

こぼれたのは涙じゃなく、笑顔。


逆に斗馬くんの方が泣きそうな顔になって

ギュウッと音がするくらい抱きすくめられた。



「俺も……藍が好き。めちゃくちゃ好き。やべー好き。

あーもうっ、何て言っていいのか分かんねぇくらい好き」



言い表せないもどかしさを埋めるように、斗馬くんは何度もあたしに唇を重ねた。