「……っ、離してよ」



にらみつけ、腕を解こうとする。


だけどそんなあたしを、那智は軽々と押さえつけて。

そしてその力は、華奢な見た目からは想像できないほどの強さで。


「返して」と「離して」をバカみたいに繰り返していると

那智は片手に持っていた絵を床に落とし

その手のひらで、あたしの口をふさいだ。



「暴れすぎ。あいつらに聞こえる」



暴れてるのは誰のせいよ。


こんな風に、からかって。


あたしがさっきどんな気持ちで、あの絵を見ていたか、知らないくせに――


「……ッ」


悔しくて、口元を押さえてくる那智の指に力いっぱい噛みついた。

ガリッ、と傷がついた感触。


那智は眉間にシワを寄せると、


「痛てぇ」


次の瞬間、その指で、あたしの歯と歯の間を割った。