「年に数回しか会えない仲だったけど、当たり前みたいに惹かれていった。
中学のとき、彼も同じ気持ちでいてくれたことを知って……」
「……」
「でもだんだん、自分たちの世界以外、何も見えなくなってしまって……」
唇が震えた。
そこまで話すのが、やっとだった。
深くうつむいたあたしの、背中をなでてくれる斗馬くん。
あたしは消えかけの声を絞り出して言った。
「バカな子ども2人が……
何も知らずに、勝手に堕ちていったんだ……っ」
お父さんたちがいなくても生きていけると思ってた。
守られているから反発できただけなのに。
本当にふたりだけの世界になったとき
怖くて、怖くて、怖くて
先に逃げ出したのは
あたしだった。