……波の音が聞こえる。



打ちよせては砕ける、白い波。



潮の匂い。


生い茂る木々の緑。


記憶を体に焼きつけるような
灼熱の太陽。


そして、




――『勝手に触んなや』








「――…ッ」


肩が大きく跳ね上がり、あたしはまぶたを開けた。


呼吸するのも忘れたまま、暗い天井に目をこらす。


夢……?


ハァッと息を吐きだすと、こっちが現実だとやっと認識できた。


となりのベッドを見る。

斗馬くんがいない。


閉めたはずの窓は開いていて、深夜のベランダからかすかに声が聞こえてきた。


あたしはそっとベッドを降りた。