ボートは水を切って、ぐんぐん進んでいく。
舵を取る斗馬くんの腕は力強く、迷いがなかった。
日が暮れるまで海で遊んだあたしたちは
温泉でさっぱりした後、地元で人気の店で晩ごはんを食べた。
明日帰るのだと思うとなごり惜しくて、いつまでもワイワイ騒いでいたくなった。
ホテルに戻ったのは夜の9時半。
オーナーの御好意で、今日は従業員用の部屋じゃなく
なんとゲストルームに泊まらせてもらえることになった。
「うわぁーっ!」
扉を開けたあたしと下里さんは、そろって声を上げる。
南欧風のインテリアで統一した、可愛いお部屋。
窓の外はライトアップした庭。
バイトの清掃時に見なれた部屋だけど、まさか泊まれるとは思ってなかった。