「こら。2人のジャマしないの」
下里さんが湯川くんの腕をつかみ、スイスイと遠くに連れて行く。
親子のようなノリの彼らに、思わず笑みをこぼしていると
「……もしさぁ」
ふいに、斗馬くんが静かな声で言った。
「もし、世界が海に沈むとして
2人乗りのボートがひとつだけあったら、藍は、誰と乗る?」
「え?」
ちゃぷん、と水の音がボートの下から聞こえた。
誰と、って……
なんでそんなこと……
あたしが返事を考えるより先に
斗馬くんがパッと笑顔になった。
「ま、湯川だけはお断りだよな。あいつと2人きりとか、うるさくて仕方ねーし」
おどけるように言って、オールを持ち直す斗馬くん。
「もっと沖行くか」
「あ……うん」