「桃崎さん、緊急連絡先をここに書いてくれる?
斗馬くんの友達だから履歴書はいらないって言ったけど、やっぱり連絡先くらいは聞いとかなきゃと思って」
マネージャーがあたしの前に、紙とペンを差し出した。
そこにはすでに湯川くんと下里さんの分が記入済みで、残るはあたしだけだ。
「あの……連絡先って」
「自宅の番号か、親御さんの携帯でいいよ」
「……」
ペンを持った指先が、氷のように冷たくなる。
ここに書ける番号なんか、あたしにはない。
でも、何て説明すればいいの?
ましてや斗馬くんの前で……
「090-XXXX-XXXX」
テーブルの向こうから、平然とした声が響いた。
「だよな? 藍の緊急連絡先」