「まじ最悪だな、副店のやつ。
シンデレラの継母かっつーの」
閉店後、居残りで店内の清掃を命じられたあたしに、湯川くんがプリプリしながら言った。
「あたしが遅刻したせいだから仕方ないよ。お疲れさま」
小声で湯川くんをなだめ、バイバイの仕草で手を振る。
副店長に聞かれたら湯川くんまで目をつけられるかもしれないし。
他のバイトの子たちもそれを恐れて、そそくさと帰って行った。
シャッターを閉じた店内で、あたしはひとり黙々とモップをかける。
と、突然
「ヘルプマン、参上」
斗馬くんがモップ片手に現れた。
「えっ? 湯川くんと帰ったんじゃなかったの?」
「戻ってきた」
「でも、副店長に怒られちゃうよ」
「よゆー、よゆー」
だって俺、社長の息子だし?
とイタズラっぽく笑う斗馬くん。
普段は自分から「社長の息子」とか言うタイプじゃないのに。
あたしに気を使わせないよう、わざと高慢な発言をしてくれてるんだ……。