下里さんというのはバイト仲間の女の子で、クラスは違うけど同じ高校の子。
サッパリした性格だから、こんなあたしでも話しやすい。
でも、どうしよう……。
バイトを紹介してもらえるのはありがたい、だけど。
「あ、すぐ決めろってわけじゃねぇから。ゆっくり考えといて」
あたしの迷いを読んだ斗馬くんが、先回りして言ってくれた。
「うん、ありがとう」
迷う理由はやっぱり、住みこみということ。
那智と距離を置くにはちょうどいいけど、その分、斗馬くんと近くなる。
やっぱりそれは、迷ってしまう。
「……あっ」
自動ドアから、見覚えのあるお客さんが入って来た。
あちらもあたしの顔を覚えていたのか、目が合うと、ニッコリ微笑まれた。