――『俺、桃崎さんが好きだ』
腕も、胸板も、あたしが知ってる“男の人”とはまるで違った。
優しいのに力強い抱擁に、頭が真っ白になって、何も反応できなかった。
好き、って。やっぱりそれは、そういう意味なんだろうか。
斗馬くんはみんなに公平にやさしくできる人だから、まさか自分が特別な目で見られているなんて思いもしなかった。
あまりにビックリして、星空の下でしばらく動けなくて。
呆然としたままアパートに戻ったから、玄関にあった那智やメグちゃんの靴に気づかなかったんだ。
ピィーッと笛の音が響いた。
弾かれたボールがコートを出て、トントントン…とあたしの方に転がってくる。
座ったまま拾い、顔を上げると
ボールを追いかけてきた斗馬くんが、すぐそこにいた。