でも、誰に何と言われても
たとえ自分自身、辛いだけの恋だと気づき始めていても
やっぱり那智のそばにいたい。
あんなセックスですら、那智から与えられるものならあたしは受け入れたい。
だってそれ以外に、あたしがあの人に勝つ方法なんて――…
「……あの」
いきなり背後から声がかかり、あたしは弾かれたようにふり返った。
深夜の住宅街。辺りは当然、寝静まっている。
恐ろしい想像が脳裏をかすめ、冷や汗がどっと噴き出した。
硬直するあたしに近寄ってくる、ひとりの男性。
暗くてハッキリと見えないけど、中年の男の人だということはわかる。
誰、これ……
こんな人、知らない。