「……ヒロトは、那智のこと心配してあげて友達想いだね」
『は?』
「でもあたしは大丈夫だから。そんなに気にしないで」
『そうじゃねーだろ。俺はお前のことも心配してんだよ。一応、幼稚園からの付き合いなんだし』
言われてハッと思い出した。
そうだ、あたし、ヒロトとは付き合いが長いんだった。
なのに今じゃあたしにとって、ヒロトは“那智の友達”のひとり。
どこまでも那智基準な自分にあきれて、もう苦笑いしか出ない。
「……ありがと。でも、本当に大丈夫だから」
だから何も言わないで。
そんなあたしの想いを察したヒロトは、不機嫌に「わかったよ」とつぶやき、電話を切った。
……ごめんね、ヒロト。
せっかく心配してくれた友達に、こんな態度しか取れないなんて。