「送っていく」と言ってくれた那智に、甘える気分にはなれなかった。
ひとりで部屋を出るあたしに彼は複雑な顔をして、そっと唇を重ねた。
……ひどい。
この状況でキスするなんて、最低な奴。
だけどあんな扱いを受けても、那智を嫌いになれないあたしは
きっともう……離れることなんて、できないんだろう。
ひとりで夜道を歩いて帰っていると、心と体の両方がズキズキ痛んだ。
空にはあいかわらずキレイな星が出ている。
けっきょく一緒に見れなかったな、とあたしは弱々しく笑った。
そのとき、携帯にヒロトから着信が入った。
誰かと話す気分じゃないけど、無視するのも悪いので通話ボタンを押した。