せっかく親が残してくれた家なのに、わざと汚すなんて。


オロオロしていると、突然

那智が背後からあたしの手首をつかんだ。


そして痛いくらいの力で、壁に押し付けられた。



「……那…智?」



耳のうしろに舌が這う。

大きく跳ねた肩にも、押し当てられる唇。


その意図を悟ったあたしは、さらに深い絶望に突き落とされた。



ただの無理やりなセックスなら我慢できる。


自分から尻尾を振って求めるふりだってできる。



――でも、これは。


隣にあの人がいるとわかった上で、鳴かされるのは。




那智の手がするりと下降し、あたしは唇をかみしめた。



あの人にだけは、わずかな声も聞かれたくない。

絶対に。