――…体が海の底に沈んだように重い。



指一本、動かすことすら億劫で、あたしは那智の腕に頭をのせたまま、時計の音を聞いていた。



セックスがすんでも、彼は「帰れ」とは言わなかった。


それは優しさなのか義務感なのか、あたしにはわからなかった。



暗闇に慣れた目が、部屋の光景を映し出す。


男友達がよく遊びにくるせいか、雑誌やタバコの空き箱が散乱して、けっしてキレイとは言えない。



あたしは無意識に視線をめぐらせ、部屋の中に画材がないか探した。


が、もちろんそんなものは見当たらなかった。



今はもう、那智の絵の才能のことなんか、きっと誰も覚えていない。


あたしも最初は彼の絵に惹かれて近づいたけど、いつのまにか考えなくなっていた。



那智が描きたくないなら、それでいい。


どんな彼でも、そばにいられるのなら、それで……。