冷たい手がTシャツの中に入ってくる。


あたしはその手を上から押さえ、それ以上の侵入を拒んだ。



「バカにしないで」



毅然と言い放ち、那智の手を振り払って、部屋を出ていく――べきだった。


……だけどあたしは、そうしなかった。


拒んでいた力は徐々に弱くなり

そして、那智の背中に腕をまわして、すべて受け入れた。



愚かだということは自分が一番わかってる。


それでもよかったんだ。


とことんバカな女に成り下がって

真実になんか気づきもしないで


そしたら、このまま那智といられるはずだから……




「那智……いいよ。して」



バカ女にお似合いの、はしたない要求を口にする。


かすかな躊躇を見せた那智に、あたしは自分からキスをして

ふたりで一緒に、ベッドに落ちた。