……何があったの?
様子がいつもと違うことは一目瞭然。
たしかに那智は短気なところがあるけれど、怒りにまかせて我を失うようなことはない。
むしろ普段はケンカしていても怖いくらい冷静で、周りが制止すればあっさりやめるのに。
明らかに、那智に何かあったんだ。
我を失わせるくらい、とてつもなく大きな何かが。
でも、どうして?
那智は今日、いつもより早く家に帰ったはず。
そこで、いったい何が……?
「那智」
そっと声をかけると、地面に座り込んだ彼がやっと目線を上げてくれた。
底冷えするような冷たい目。
あたしはひるみそうになる気持ちを抑えた。
「帰ろう。アパートまで送っていく」