「あたし……行けないって、メール送ったんだけど」
「うん。知ってる」
「じゃあ、なんで……」
捨て子のように震える彼女。
傷つきやすそうなその表情は、本来の彼女の姿だと俺は思った。
「俺のうぬぼれかもしれねぇけど、あのメール……本心では、俺に助けを求めてる気がしたから」
暗がりでも彼女の目が赤くなったのがわかった。
懸命に何かをこらえ、唇をかむ。
こんな姿を、俺は以前も見たことがあったんだ。
「桃崎さん」
俺は足元の小さな石ころに視線を落とした。
「ムリに話してとは言わねぇけど……こないだ泣いてたのも、今日も、男が原因だよな?」
長い沈黙のあと、小さく「うん」と返ってくる。