「お腹空いたやろ? すぐにご飯の用意――」
「いらない」
さえぎって即答したあたしに、おばさんの笑顔が固まった。
「えっと、じゃあ梅ジュース飲む? 今朝作ったから、ね?」
うざい。うざい。うざい。
返事するのもヤなくらい、うざい。
あたしの無言を“イエス”の意味にとったのか、おばさんはそそくさと冷蔵庫に向かう。
「藍」
こんどは、お父さんだ。
「那智くんは自分の部屋か?」
「さぁ。あたしに聞かないでよ」
つっけんどんに答えると、お父さんは情けない苦笑を浮かべ、頭をかいた。
「そっか。いやぁ、絵のことで那智くんにアドバイスもらいたかったんだけどね」
お父さんは最近、ガラにもなく油絵なんて描き始めた。
那智との共通の話題のために。
見え見えのご機嫌取り。
バカみたい。