レジで会計を済ませると、家まで待ちきれず近くのドトールに入ってさっそく本を開いた。


それはいくつかの作品が収録された短編集だった。


彼女が話していた作品はとても短く、あっという間に読み終えることができた。



「美しい景色が、瞳に残る……か」



正直、思っていたよりもロマンチックな物語だったのが意外。


けれど新たな一面をひとつ知った気がして、俺は素直に嬉しかった。


明日会ったら、さっそく本を貸してあげよう。

そう思いながら席を立ち、ドトールを出た。



自転車に乗って家に向かう。


大通りから離れると、このあたりは車の通りもなく静かだ。



暗い夜道、無心にペダルをこいでいると、


……彼女は今、何をしているだろう。


ふと、そんな気持ちが芽を出した。