駅前のTSUTAYAは深夜まで営業しているので余裕で間に合った。
調べてきた本のタイトルを探しながら、俺はさっきの親父とのやり取りを思い出す。
……まったく。絵に描いたような仕事人間だよな。
俺に対する態度も、父親というより上司じゃねーか。
まぁ俺はあんな親父に育てられたわりに、自分で言うのも何だが、ひねくれずに育ったと思う。
母さんは親父と正反対で優しいし、歳の離れた姉貴も俺をかわいがってくれた。
学校では楽しい友達に囲まれて、俺はそれなりに幸せな人間なんだろう。
だからこそ、親父が口を酸っぱくして言う「勝て」が、いまいちよく分からないんだ。
「あ、あった」
探していたタイトルを見つけ、俺は棚からその文庫本を抜いた。