バイトの後、どうしてもその本のことが気になり、自宅のパソコンで調べてみた。
いや、本当に気になっていたのは本ではなく、彼女の思い出の方なんだけど。
わずかなキーワードを頼りに検索すると、それらしき情報にたどりついた。
もう夜の9時を過ぎているけど、開いている本屋もあるだろう。
思い立ったら即行動、とばかりに玄関で靴をはいていると
運悪く帰宅してきた親父とはち合わせた。
「なんだ、出かけるのか?」
不機嫌な親父の声。
「ちょっとね」
気にせず親父の横をすり抜けてドアを開けると、
「斗馬」
後ろから厳しい口調で言われた。
「まだ一年生だからって、遊んでばかりいるなよ。そんなんじゃ将来、勝てる人間にならないぞ」
俺は返事をせずに家を出た。