「いらねーよ」


「愛しの姫にソックリなのに?」



まだ言うか。


俺は雑誌をテーブルに投げるように置いた。



「湯川、よーく聞け。
さっきも言ったけどな、俺と桃崎さんはただの友達」


「でも斗馬は姫のこと好きだろ?」


は?


「お前、姫の前では態度がやわらかくなってるって、自覚ねぇの?」


……マジかよ。

言われて初めて気付いた俺は、バツが悪くなる。


たしかに自分でも、彼女に対して弱い部分はあると思ってたけど。



「ま、惚れた方の負けってことだ」


「……」



ポンと肩を叩かれ、俺は頭の中でもう一度、湯川の言葉をくり返した。



惚れた方の負け。



“勝て”が口ぐせの親父なら、きっとそんな恋はやめろと言い切るだろうな。

俺は小さく苦笑した。