「帰ってこんでも、えぇのに」


しらけた表情で那智がぼやいた言葉は、あたしの心の声と、ぴったり同じだった。


そう、同じなのに。

「うん」とうなずくことが、できない。



気ままな猫が人間の腕をすり抜けるように、那智はするりと踵を返し、リビングを出て行った。




「ただいまぁ」



ほどなくして、外側からドアが開いた。

そこにはお父さんと一緒に、神木のおばさんの姿も。



「さっき偶然、外で会ったんよ。荷物が多いから乗せてもらってん」



尋ねてもいないのに、いちいち説明してくるおばさん。


ホント、“帰ってこんでも、えぇのに”。