なんで……
この人にはわかってしまうんだろう。
あたし自身ですら、ちゃんとわかっていなかった本心が。
那智を完全に失って
本当にもうひとりぼっちで
今、斗馬くんに会ったら
弱いあたしは彼に助けを求めてしまう気がした。
だから、会いに行くのをやめたのに……。
「桃崎さん」
地面の小さな石ころを指先で弾きながら、斗馬くんが言った。
「ムリに話してとは言わねぇけど……こないだ泣いてたのも、今日も、男が原因だよな?」
あたしは斗馬くんの指の動きを見ながら、しばらく黙っていた。
そして、小さく「うん」と答えると、斗馬くんの指がピクリと反応した。
「そっか、やっぱりなぁー」
ため息がまじった、だけどどこか清々しい声。