「……は? まさかぁ。
最近あたし、下級生から告白なんて全然――」
「あぁ、俺がおるからやろ」
サラッとつぶやき、那智はペットボトルのふたをゴミ箱に投げた。
そして、かすかに濡れた唇で
ムカつくくらい、キレイな弧を描いて。
「俺の許可なしに、お前に近づくヤツはおらん」
……どういう意味よ、それ。
ただの冗談なのか。
それとも、そうじゃないのか。
期待と困惑が胸の中でもつれ、あたしは那智の瞳を凝視する。
けれど彼は意地悪に微笑むだけで、ちっとも真意が読み取れない。
「那――」
「あ」とつぶやいた那智が、窓の方を向いた。
つられてあたしも、外に意識を集中させる。
駐車場に入ってきた、車の音。
お父さんの車だ。