「ま…待って……那智っ」
追いすがる自分を止められなかった。
「違う……那智……違うのっ」
何が“違う”のか。
何を言い訳しているのか。
今のあたしたちに、通じ合うものなんか何もないのに。
後ろからシャツをつかんだあたしに、那智はゆっくりふり返る。
至近距離で見下ろす視線が、あたしの時間を急速に巻き戻す。
その瞳はかつて、あたしを捕えて閉じこめた瞳。
その唇であたしを強引に奪い
その黒髪であたしの頬をなでて
その指であたしの肌をなぞった。
あたしの、すべてだった――
すがりつくあたしの手の上に、那智の手が重なる。
「……」
もう一度
もう一度だけ――…