“変”という言葉を強調して言われ、あたしは小さく笑った。


そして、ゆっくりと口を開く。



「……実は……あの人が探してた本、あたしも子どものころに読んだことがあったの」


「へぇ」


「タイトルとか全部忘れちゃったんだけど、内容がすごく印象に残ってて……それでちょっと、ビックリしただけ」



こんなこと言わなくていいのに。

あたしは何をペラペラと……。



「じゃあ、桃崎さんの思い出の本だったんだ?」


「……うん」



ちくちく胸が痛む。


幼い日のあたしと那智の、幸せだった短い時間。


その思い出を斗馬くんに語るのは

なぜか、ズルい気がした。



あたしはそれっきり口を閉ざした。