「さっき桃崎さんが湯川を説得してるの見て、思ったんだ。
きっと、いい子なんだなって。
ここで意地はって仲直りしなかったら、後悔するだろうなぁって」
斗馬くんは言葉をひとつひとつ丁寧に選ぶように、ゆっくりとあたしに語りかけた。
彼の言う“仲直り”という言葉は、不思議なほどあたしの心を揺さぶった。
だって……
壊れたモノは、もう直らないって思ってたから。
あたしがかつて持っていた
キラキラとキレイなものはすべて
もう二度と、元には戻らないから……
「ダメ、っすか?」
いたずらの許しを乞う子どものような目で、斗馬くんが反応を求める。
あたしはうまく返事ができず
「ダメ…じゃない」
一言、そう答えたら
「……よかったぁーっ」
斗馬くんの顔に、またたく間に
満面の笑みが咲いた。