「あ……うん」


「俺らも。一緒に行こっ」



湯川くんの隣には斗馬くん。


だけど彼の顔に、いつもの人懐っこそうな笑みはない。


目をそらして歩き始めたとき、湯川くんの携帯が鳴った。



「あ、まただ。うぜーなぁ」



湯川くんはチラッと画面を確認すると、そのままポケットにしまった。



「どした?」


「んー、親父から」


斗馬くんに聞かれ、湯川くんが答える。



「うちの親父って、大阪に単身赴任じゃん? 今日は久しぶりに帰ってきてるから、家族でメシ行こうって誘われてさ。バイトあるから断ったのに、しつけーの」



湯川くんの発言を耳にした瞬間

あたしは、自分でも予想外の言葉を口走った。



「ダメだよ……行って!」


「へ?」