……それは
あなたが善意の中で育ってきたから、そう思えるんだ。
“まわりの人間はいいヤツら”?
何の確信があってそんなこと言えるの?
今、あなたの目の前にいるあたしは最悪な人間だよ?
自分の父親とおばさんのことを、本気で死ねばいいなんて思った人間だよ……?
みじめな気分で黙りこくっていると、斗馬くんは
「やっぱ、おせっかいだったな」
と頭をかいて、帰って行った。
翌日、ゴールデンウィークが明けて学校が始まった。
教室ではなるべく斗馬くんと目が合わないよう、自分の席でうつむいて過ごした。
あちらも気まずく思っているのか、話しかけてはこない。
……これでいい。
また、独りに戻るだけのこと。
あたしなんかが他人と関わろうとしたのが、ムリだったんだ。
「姫もバイト?」
放課後、校門を出たところで、湯川くんに声をかけられた。