「ありが…と」



感謝なのか困惑なのか

それとも他人の優しさに気がゆるんだのか


自分でもよくわからなかった。


気づけば、涙声になっていた。



「桃崎さん?」



驚いたように顔をのぞきこまれ、あわてて目をそらす。



「どうかした?」


「別に…」


「何か嫌なこと――」


「ほっといてよっ」



きつい口調になってしまったのは、わざとでもあった。


これ以上弱さを見せたら、すべてが一気に崩れてしまう。



だから、防御壁を高く


もっと高く。




「あたしに関わろうとしてこないで……」



あたしの心の内なんて、他人にのぞかれたくはない。