「ごめん……同じ携帯だから、あたしのだと勘違いしちゃって」
今の今まで、那智と同じ携帯の機種だということすら知らなかった。
ひとつ屋根の下に住んでいるのに。
那智はあたしに背中を向けて、携帯を操作し始める。
「あー、俺。……いや、風呂入っとった」
那智の言葉の間に、かすかに女の子の声が漏れて聞こえてくる。
甘ったるい、語尾が上がった声。
聞きたくない。
胸が詰まって
息ができなくなって
あたしは外の空気を求めるように、アパートを出た。
――“着信中:メグ”
あの子のこと、名前で呼んでるんだ。
――『あー、俺』
あんな打ち解けた話し方をするんだ。