『着信中:メグ』
表示されたその文字で、すべてを悟った。
これはあたしの携帯じゃない。
那智のだ。
そして、そのむこうにいるのは。
――『那智くんと同じクラスの、相賀メグといいます』
ハッキリと脳裏によみがえる。
やわらかで無垢な、少女の空気を身にまとった女の子。
手の中で鳴り続ける携帯を、あたしは元の位置に戻すこともできず凝視する。
やがて音が止み、画面には不在着信のマークが残った。
静まり返ったリビングに、せっけんの匂いがふわっと漂った。
「返せや」
そっけなくつぶやいて、あたしの手から携帯を取ったのは那智。
シャワーを浴びたばかりのその体から発散される熱が、あたしの心臓を熱くした。