「桃崎さん。ちょっと」
副店長の鋭い声で名前を呼ばれたあたしは、在庫整理の手を止める。
「はい」
「新刊の棚を並べたのって、桃崎さんよね?」
「……はい」
あたしの返事を聞いた副店長が、メガネの奥の目をつり上がらせた。
「ビジネス書と文芸書がごちゃ混ぜになってるじゃない。棚を分けるようにって説明したでしょ」
「え……?」
でも、さっき副店長に「これを一緒に並べて」って言われたから、その通りにしたんだけど……。
とは、さすがに言えなかった。
「すみませんでした」
「しっかりしてちょうだいよ」
吐き捨てるように言って去っていく副店長。
「ハァー……」
今日はゴールデンウィーク最終日。
この店でバイトを始めて早5日。
だけどあたしはこんな感じで叱られっぱなしだ。