新人のあたしの教育係は、湯川くんになった。


湯川くんはこちらが心配になるくらい、仕事に関係のないムダ話を堂々とする人だった。



「ピーチ姫って知ってる? スーパーマリオに出てくるお姫様なんだけどさ。すげー可愛いの」


「はぁ」


「でさ、桃崎さんの桃って、英語でピーチじゃん? しかも君、いかにも姫って感じじゃん?」


「はぁ」


「それで誰が言い出したのか知らないけど、いつのまにかクラスで“ピーチ姫”が定着してたんだよな~」


「はぁ……あの」


「ホントはみんな姫に話しかけたかったんだけど、いつもひとりでいるから声かけるタイミングが見つかんなくってさぁ」


「お話し中すみません。さっきから副店長がにらんでるけど、大丈夫ですか?」