それから那智は誇らしげに、採ったばかりのカブト虫を見せてくれた。
あたしは生まれて初めて触る、昆虫の感触に悲鳴を上げ、それを見た那智がまた笑った。
灼熱の夏。
12歳と11歳だった、あたしたち。
自分たちの運命をまだ知らなかった、幼いふたり。
一目惚れとか、恋心とか、そんなんじゃなかった。
あの日、生まれた感情は
言葉や理屈じゃ説明できない。
だけど今もハッキリと
あたしの心に、焼きついたままなのだ。
『勝手に触んなや』
あの一瞬。
まぶしくて
まぶしくて。
太陽が落ちてきたのかと思った。
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