「……なん…だ……」
脱力した手の中から、絵が風に飛ばされていく。
「やだな、あたし…バカ……」
滑稽な自分に、フッ…と笑いがもれた。
みじめで、バカバカしくて、あたしは肩を震わせて笑った。
それは次第に小刻みになり
スカートの上にぽたぽたと、涙が落ちた。
「…那…智―……っ」
あたしは今さら
何を一瞬、夢みたの?
「那智……なちっ……
なち――……ッ…!」
自分から手放したものを
取り戻せるはずがないのに。
二度と、なかったのに。
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