そのとき、ふと、あたしの目にゴミ捨て場が映った。
大きなゴミ箱のふたの上に、無造作に捨てられた紙くずがあった。
「……ッ」
丸く握りつぶされたそれを見た瞬間
あたしは自転車を地面に叩きつけるように降りて、ゴミ捨て場に駆け寄った。
あれは……あれは、那智が描いてくれたあたしの絵。
今朝、あたしが捨てた絵だ。
それがなぜ今もここにあるのか。そんな疑問を感じる余裕はなかった。
ただもう一度、あの絵を取り戻したいと。
輝いていた時間のカケラを、やっぱり捨てたくないと。
その一心で。
「あっ……」
突然吹いた意地悪な風が、絵を連れ去った。
「待って……!」