『お前――』


彼の指先が髪に触れる寸前。

あたしは思わず、ギュっと目をつむった。



『――もしかして“藍”か?』



『え?』



そっとまぶたを上げるとそこには、黄色い花ビラをつまんだ彼の指。


あ……、髪についていた花ビラを取ってくれたんだ。


やっと思考が回転し始めたあたしは、改めて彼の顔を見上げた。


整った目鼻立ち。

今まで出会ったこともないくらい、キレイな。



『あ、あんた……なんで、あたしの名前知ってんの?』



答えはもう想像がついていたけれど、たずねてみた。


そのとたん、彼はプッと吹き出して。



『声、震えすぎ』



急に11歳の悪ガキの顔になって

笑ったんだ。