朝日が差し込む部屋のすみで、あたしは鏡の前に立ち、セーラー服のリボンを結ぶ。
今日でこの制服ともサヨナラ。
「7時…10分か」
家を出るにはまだ早い。
窓際に座って静かな町並みをながめていると、バイクの音が近づいてきた。
「あーマジ眠ぃーっ」
「てめー居眠り運転すんじゃねーよ。だから飲みすぎんなって言ったのによぉ」
「ぎゃははっ」
朝の住宅街には不釣り合いな、騒々しい声が響く。
男の子3人乗りの原付。
その一番後ろに座っているのは、那智だ。
「んじゃなー、那智」
「おー」
アパートの前で停まった原付から、那智があくびをしながら降りた。