そのとき見た那智の顔は 完全な、無表情だった。 だけどあたしの言葉に傷ついたことは 深く深く、傷ついたことは わかりすぎるくらいに、わかった。 那智の左手から力が抜けていく。 あたしはゲホゲホと咳きこみながら、その場に崩れ落ちる。 「……そうか」 ただ一言。 それだけで、充分だった。 あんなにがむしゃらに 創り上げた ふたりの世界は 哀しいほど、もろくて。 あたしの手で すべて壊してしまった。