かろうじて開いたふたりの距離は、それでもわずか数十センチ。
那智の視線から逃げたい一心で、あたしは目をそらした。
「藍。こっち向け」
「……」
「どういうつもりやねん」
那智の左手があたしの頬を両側からつかみ、グイッと上を向かせた。
「やめて……」
左手が移動し、あたしの耳の側面をなぞる。
那智の指先。
那智の体温。
触れられた部分に見えない鎖が巻きついていくように
囚われたあたしを、那智はその目で確認しながら、ゆっくりと首筋にまで手をおろしていく。
「やめて……那智」
「なんで?」
お前は、俺のモノやろ?
那智の瞳がそう言った。