負けそうになる自分を、ぐっとこらえる。



「……もう、好きじゃ…ない」



言い終わると同時に唇をふさがれた。


ねじこむように入ってくる舌。

逃げようともがくほど、それは深さを増していく。


頭を振って抵抗しようとしたら、ガリッ…と嫌な音が内側で響いた気がした。


顔を離した那智に見下ろされながら、あたしは自分の唇が切れたことに気づいた。



「血……」


あたしの口元に触れる指。


「すげぇ、赤い」



ぺろりと舐め上げられる。

その感触に体の芯が震え、飲みこまれそうになる。


また、負けてしまう――



「やっ……!」


あたしは力いっぱい、那智を両手で押し返した。