「正直に言えよ。
俺を避けてんのは、親のことで怖くなったからか?」
「……」
そうだよ、と答えても
きっと那智は聞き入れてくれないだろう。
自分でもわかってる。
今さらそんな理由で逃げるなんて、ムシがよすぎる話だって。
だけどどうすればいいのか、もうわからないの。
以前のようにまっすぐ那智を見つめる自信が、なくなってしまったんだ。
「……お父さんたちのことは、関係ない」
「じゃあ、何やねん」
「あたし……もう那智のこと、好きじゃないから」
その瞬間、両肩をつかまれ、体育館の外壁に押し当てられた。
那智の濃い影があたしに落ちた。
「俺の目見て、もっかい言うてみ?」